平成30年度 日本薬剤師会 研究倫理に関する全国会議参加報告
富山県薬剤師会倫理審査委員会
副委員長 浜野邦彦
H31年3月13日(水)日本薬剤師会 会議室で開催された研究倫理に関する全国会議に出席したので、報告します。
1.倫理審査に係る事務的事項(日本薬剤師会 臨床・疫学研究推進委員会 山本 克己氏)
研究倫理に関する研修を継続して行うことが必要であり、各県薬剤師会で年に1回程度は開催し、研修修了証を発行することが要請された。また、倫理審査委員会が正しく運用されているかは、報告システム(AMED)で判断されるため、委員名簿・手順書・委員会開催状況・審査概要等を年1回報告しなくてはならない。また、倫理審査委員会は、薬局業務や薬剤師の社会貢献のエビデンス化に貢献するものであり、これらエビデンスが診療報酬改定などの資料となっていくものと考えられる。
倫理審査についての証明書等の書類整備についての説明があり、倫理審査証明書、研究等実施状況報告書は、富山県薬剤師会で未整備であることがわかったため、早急に準備を行う必要がある。修正後の書類の提出方法は、修正箇所に下線を引く、修正が生じた書類のみ提出することなどを周知する。
2.倫理審査に関する事務局運営にかかる諸問題(日本薬剤師会 臨床・疫学研究推進委員会 氏原 淳氏)
2016年日薬学術大会の発表内容のうち、63%が倫理審査の必要な調査・研究だったと思われたことから、倫理審査の必要性について、会員へさらなる周知が求められる。また、申請も増えることが予想されるので、事務局としては、指針を適切に運用するために研究者・研究責任者・研究期間の長・倫理審査委員会・事務局のそれぞれの役割の把握が大切である。研究実施に当たっては、総括的な監督・研究実施のための体制・規定整備のためにも研究機関の長の責務は重く、重要であることが示された。研究期間の長の役割について、富山県薬剤師会の倫理審査では周知されていなかったため、今後、研究責任者と研究期間の長の役割とその相違を会員に説明し、理解していただく必要がある。倫理審査委員会の委員についても教育・研修を継続的に受けなければならず、日本医療研究開発機構の倫理審査委員のための倫理研究用動画教材サイト(http://www.rec-education.org)を利用して必要な知識を習得するよう周知する。
3.倫理審査基準の統一化に向けて(日本薬剤師会 臨床・疫学研究推進委員会副委員長 飯嶋 久志氏)
研究計画について倫理審査を行うポイントとしては、科学性、信頼性、倫理性があるか、さらに、実行性があるか、法的妥当性があるかを評価する。
計画を立てる際に注意すべき点(倫理審査を行う際に注意すべき点)
・ 研究計画にはPECO(PICO)は必要な項目である。
・目的:研究の意義が明確になっているか。
・方法:目的が達成できるか?誰でも同じ方法で実施できるか?(再現性)
研究対象者が適切に選ばれているか?ICは適切か?
バイアスはできる限り排除されているか?データ解析方法は適切か?
リスクが最小になるようにしているか?
・ 研究期間:目的が達成するのに適切な期間であるか?
・有害事象が発生した場合の対策や補償、報告方法が定められているか?
・データ(個人情報)の保管が適切か?
・ 関連法規(薬事関連法規、個人情報保護法など)を厳守しているか?
・ 継続して研究倫理の研修をうけているか?
などを考慮して、研究計画書を作成する。なお、倫理審査委員会はこれらの点が適切かどうかを審査し、統一の見解を提示する。
以上の研修のあと、倫理審査基準の統一化に向けて、活発な質疑応答がフロアで行われた。
追記:上記会議の内容を含めて、研究倫理に関する継続教育研修を富山県薬剤師会でも実施することになりました。4月18日(木)午後7時30分から開催(別途HPに案内掲載)しますので、現在、研究を実施されている方ならびにこれから臨床研究を計画されている方は、是非ご参加いただきますようお願いいたします。